こんにちは!
株式会社Story’s 代表取締役の佐藤です!
前回は「【フリーランスもOK?】SAPコンサルに必要なスキルとキャリアパスとは?」の動画の補足として、「人生のターニングポイント!単価を上げられるSAPコンサルタントのキャリアパスとは?」について紹介しました。
SAPを扱う上で、モジュールの種類を知る必要があります。
まずはこのモジュールのうちのどれかを担当し、モジュールのスペシャリストとしてスキルアップしながら関連するモジュールのことも学んでいくことがSAPコンサルのキャリアパスと考えられます。
今回は、「【未経験〜経験者まで!】SAPコンサルで活躍するために必要なこと」の動画の補足として、「SAPコンサルタントが知るべきモジュール7選」について紹介します。
SAPのモジュールの定義・種類について
SAPのモジュールとは、業務領域ごとに分けたシステムの機能群のことを言います。
イメージとしてSAP ERPを構成する「パーツ」のようなものです。
SAP社のモジュールは合計20以上のモジュールが存在しています。企業は自社に合わせて複数のモジュールを組み合わせて使用しています。
SAP ERPは主として以下のモジュールに分かれています。
モジュール名 | 略称 | 英語名 |
---|---|---|
財務会計 | FI | Financial Accounting |
管理会計 | CO | COntrolling |
販売管理 | SD | Sales and Distribution |
購買管理/在庫管理 | MM | Material Management |
物流管理 | LE | Logistics Execution |
生産計画管理 | PP | Production Planning and Control |
品質管理 | QM | Quality Management |
SAP ERPでは、システム設定や開発を機能群ごとに管理したり、業務の要件定義を領域ごとに進めやすくしたりするためにモジュールで分類しています。
FI・COを会計系、SD・MM・LE・PP・QMをロジ系と呼ぶことが多いです。
SAPコンサルタントが知るべきSAPモジュール7選
上記で紹介しましたモジュールが、それぞれどのような特徴を持っているのかについてご紹介します。
①財務会計モジュール:FI(Financial Accounting)
SAP ERPは会計システムから始まったと言われていて、SAP ERPを導入する大部分の企業はFIモジュールを使用します。
販売や購買の実績と紐付いて、FIモジュールに収支実績が連携されますので、SAPの中心的なモジュールです。
SAPは会計システムから始まっており、お金の移動・資産の移動がすべてFIモジュールに繋がっています。
FIモジュールは、PL(損益計算書)・BS(貸借対照表)・CF(キャッシュフロー計算書)のような社外向けの財務諸表を出力するための機能が備わっていますので、会社の業務に必要不可欠です。
FIモジュールを導入するメリットは、データ入力や明細管理などの財務会計業務全体をサポートするため、業務削減やヒューマンエラーの防止が出来ることです。
サブモジュール
主に以下のサブモジュールに分かれています。
- 総勘定元帳(FI-GL)︰会社のあらゆる取引を記録するための機能。他のモジュールで転記された実績をFI-GLに連携することで、会計仕訳が登録できる
- 債権管理(FI-AR)︰得意先補助元帳を作成する機能。得意先別に売掛金や未収金の残高と明細を管理できる
- 債務管理(FI-AP)︰仕入先補助元帳を作成する機能。仕入先別に買掛金や未払金の残高と明細を管理できる
- 固定資産会計(FI-AA)︰不動産や大型設備といった有形固定資産やシステムなどの無形固定資産といった固定資産として管理できる
②管理会計:CO(COntroling)
SAP CO(Controlling)とは、管理会計モジュールのことです。具体的には売上に紐づく原価を管理するモジュールを言います。
財務会計のFIとは異なり、主に社内向けに利益の予測や収益の管理などの内部管理をして、社内向けの財務レポートを出力するための機能が備わっており、社内の財務報告書を作成するために利用します。
COモジュールを使用することにより、どの製品の収益が良いのか、どの製品の原価を見直す必要があるのかをコストベースで会社の体調を把握することが出来ます。
COモジュールは社内に関するあらゆる費用を管理するので、業務サイドの知識も幅広く求められます。
SAP ERPでは、購買・生産・販売のマスタ情報をベースに、COモジュールで標準原価計算が出来ます。
また、購買・生産・販売の実績をCOモジュールに連携することで、実際原価の計算も出来ます。
一般的に標準原価計算が出来ている企業は多いですが、購買・生産・販売実績を連携する必要がある実際原価が計算出来ている企業は少ないです。
そのため、SAPのCOモジュールを利用した原価管理により調達・生産・販売の最適化が実現できるので、SAPを導入する企業が多いです。
サブモジュール
COのサブモジュールは下記の通りです。
- 間接費管理(CO-OM)︰電力・水道費、人件費、減価償却費などの製造過程にかからない間接費を集計したものを各直接部門に配賦管理
- 製品原価管理(CO-PC)︰購買・生産・販売のマスタから標準原価の計算、購買・生産・販売の実績から実際原価の計算。標準原価・実際原価の差異から、原価差異分析をします。
- 収益性分析(CO-PA)︰収益及び費用から、品目・得意先・国・プラントなどごとに、多次元で収益性分析をします。
③販売管理:SD(Sales and Distribution)
SD(Sales and Distribution)とは、販売管理モジュールのことです。
SDモジュールでは、受注→出荷→請求といったプロセスを作ります。
例えば、得意先からの見積や受注、物の出荷、得意先への請求といった機能がありますので、請求情報をFIモジュールに連携し、売上計上をします。
特殊な販売プロセスにも対応していて、返品の場合は、返品受注→入荷→請求取消というプロセスを行います。物を扱わないサービス業の場合、受注→請求というプロセスにも柔軟に対応できます。
SDモジュールでは受注・出荷・請求のどのプロセスでも帳票を発行出来るので、販売業務の改善が見込めます。
また同じ品目でも得意先ごとに販売価格を変えたい場合、販売数量によってディスカウントしたい場合等に対応しています。企業の価格決定コンセプトに合わせて、柔軟に価格を決定できる機能も有しています。
SDモジュールのプロセスは下記の通りです。
- 受注︰得意先ごとに受注管理
- 出荷︰出荷内容の管理、出荷日程から製品準備日程の割り出し
- 請求 ︰得意先への請求管理、FIモジュールと連携し売上の計上
また、製品返品時の返品受注→入荷→請求取り消しにも対応しているため、様々な業種への柔軟な対応が可能です。
顧客からの引き合い、見積もり、受注、発送、請求処理まで一連の流れを一括で管理し、バックオフィスの強力なサポートをすることができます。
また、返品、入庫、請求のマイナスまでそれら全てを財務会計のFIモジュールと連携して一元管理することができます。
具体的にいうと、得意先からの受注をもとに、製品の出荷、その後 得意先へお金の請求をしていきます。
また、得意先ごと・国ごと・販売数量割引など、価格を柔軟に設定することができます。
自社の販売戦略や得意先との契約に合わせて対応できる標準機能をSAPは保持しています。
④購買管理/在庫管理:MM(Material Management)
MM(Material Management)とは、購買管理/在庫管理モジュールのことです。
MMでは、発注依頼→購買発注→入庫→請求書照合といったプロセスを実現する調達管理と、入出庫・棚卸など、在庫管理の2つのメイン機能から成り立っています。
在庫管理機能が備わっているので在庫の入庫から在庫数量のチェック、在庫金額の管理、棚卸処理などをサポートし、在庫の情報を正確に把握し、在庫業務の負担を減らします。
調達管理では、購買依頼から請求書の統合まで購買プロセスの一連の流れに対応しています。特徴として、外注サービスや外注加工などにも対応しています。
仕入先への発注依頼・購買発注や物の入庫、仕入先から届いた請求書の確認といった機能を有し、請求書照合情報をFIモジュールに連携し、仕入先への支払処理をします。
MMモジュールを使用することで、資材調達が最適化されるので、不良在庫のリスク回避やキャッシュフローの円滑化が期待できます。
MMモジュールのプロセスは下記の通りです。
- 購買依頼︰発注したい部門からの購買依頼を登録
- 購買発注︰購買依頼をベースに、仕入先への購買発注を登録
- 入庫 ︰仕入先から届いた物を自社倉庫に入庫
- 請求書照合︰仕入先から届いた請求書の内容に間違いがないかを確認し、FIモジュールに連携されるので仕入先への支払処理へ繋がります。
- 入出庫︰購買入庫・生産における構成品出庫・生産品入庫・廃棄出庫等の会社における入出庫を管理。入出庫の種類を「移動タイプ」で管理し、在庫資産の増減ごとに会計仕訳を自動記帳。
- 棚卸 ︰SAPの在庫数量と、現場の実在庫を比較し、棚卸時点の在庫数量に洗い替える機能。
⑤物流管理: LE(Logistics Execution)
LE(Logistics Execution)とは、物流管理モジュールのことです。
LEモジュールは、SD(販売管理)の出荷プロセスの詳細化と倉庫管理をするモジュールを言います。
LEモジュールを使うことにより、得意先や自社内の物流・在庫の最適化が可能です。
例えば、出荷管理では「輸送日程計画」・「輸送経路決定」・ピッキングを行います。また、倉庫管理ではプラント間の転送指示・「在庫転送」をします。
「輸送日程計画」は、受注の得意先への納入日程日から逆算して、いつまでに出荷する製品を生産や出荷準備をすれば良いのかの計画を実施します。
「輸送経路決定」では、得意先のロケーションや複数配送等を考慮することで最適な輸送経路を提案します。
「在庫転送」では、自社在庫の数量・生産計画から、プラント間の在庫の融通をし、在庫数量の調整をします。
⑥生産計画/管理:PP(Production Planning and Control)
PP(Production Planning and Control)とは、生産計画/管理モジュールのことです。
PPモジュールでは、生産計画→製造指図→製造実績(入庫・出庫・作業完了確認)といったプロセスを実現します。
具体的には、得意先からの受注や需要見込から生産計画(MPS/MRP)を実施します。
PPモジュールを利用することで、製品を作るために必要な原材料の数量を計算し、在庫の不足分があれば補充発注ができます。
また、製造過程で発生する無駄やムラ(数量差異、金額差異)等を分析して原価の見直しをしたり工程の改善に繋げたり出来ます。
PPモジュールは他モジュールに一番関連するモジュールです。
具体的には、受注(SD)をベースに生産計画(PP)を立てて、原材料を発注(MM)に繋がります。
さらに、製造実績(PP)を計上することにより、在庫(MM)が変わり、実際原価計算(CO)がされるためです。
⑦品質管理:QM(Quality Management)
QM(Quality Management)とは、品質管理モジュールのことです。出来上がった商品の品質管理に関わるモジュールです。
単体では使用せず、MM、PP、PMなどと併用されます。
QMモジュールは、「品質検査ロット登録→品質検査記録→使用決定」という3つのステップで成り立っています。
品質計画から検査、仕様決定までのプロセスをサポートします。例えば、製造した製品の品質管理や返品に関わる品質管理などを行います。
QMモジュールを使用することにより、品質検査と在庫ステータスの自動連動出来るので、リアルタイムで高度な在庫管理が実現可能です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事では「SAPコンサルタントが知るべきモジュール7選」について解説しました。
SAP ERPには多くのモジュールがありますので、まず優先度の高いモジュールを知る必要があります。
その後はモジュールを知るだけでなく理解をしていく必要がありますので、SAPコンサルタントの育成は難易度が非常に高いです。
株式会社Story’sでは、SAPコンサルタントの育成にも注力しています。SAPコンサルタントやSAPコンサルタントを目指したい方がいらっしゃいましたら、お気軽にコンタクトフォームよりお問い合わせください。